シリコンバレーのロボティクスインターンシップに参加して


1. インターンシップ概要

・インターンシップ先:大手日系企業のシリコンバレー研究開発拠点。メンバーは国籍問わず世界各国から採用(日本人は1割足らず)
・勤務地:クパチーノ(カリフォルニア)
・担当業務:Robotics Software Engineer
・滞在期間:2017/10/12 – 2018/3/22(約半年)
・取得ビザ:J1(インターンシップビザ)
・インターンシップ紹介元:イントラックス

2. 参加理由

将来の可能性を拡げるために、海外、特に国際色の強い地域で働く経験を得たいと常々考えていた。そんな中、大学編入に伴って半年程自由な時間ができ、今しか長期で海外滞在するチャンスはないという思いから、米国インターンシップに応募した。そんな中見つけた案件がシリコンバレーという魅力的なロケーションであったこと、大学の専門性と一致し専門技能を高めることができること、インターンの中でも比較的高待遇な条件であったことから、参加に踏み切った。

3. 担当業務

本インターン先は、シリコンバレーという地ならでは、国籍問わず世界各国から人材を採用している研究開発チームである。私は、このチームのリードエンジニアかつロボティクスエンジニアであるアメリカ人Cとタッグを組み、市場化を目指す新規プロトタイプロボットにおけるソフトウェア開発部分を主に一人で従事した。
エンジニアCはコンピューターサイエンス出身の優秀なエンジニアであるだけでなく、チームメンバーの潤滑剤となるような繊細さを兼ね備え、一人一人に細かな声掛けをし、チームワークの向上に大きな貢献をしていた。また仕事の他に自身で開発したオリジナルゲームの会社も副業として運営し、休日にはゲームの開発。さらに日本でのゲーム開発のインターン経験を持っていたため日本語でもコミュニケーションが取れるという、全てを兼ね備えたシリコンバレーならではのスーパーエンジニアであった。このようなエンジニアと一緒に働け、考え方・働き方を直に知れたことがこのインターンでの一番の財産といっても過言ではないと思う。
仕事内容は専門性が高く、ロボットOS(ROS)や、Gazeboというシミューレションソフト、カルマンフィルター等の数理モデル、ディープラーニングのパッケージなどを扱う必要があり、半年で凡そ計5000行程のコーディングとなった。しかし、大学時代の専攻とマッチしていたことと、周囲のメンバーが非常に協力的で何でも相談に乗ってくれたこと、各マイルストーンまで十分な時間が与えられ調査や勉強しながら開発に取り組めたことが、大きく救いとなった。
インターンシップのゴールとしては、①ロボットの国際学会でプロトタイプのデモを行うこと、②ロボティクスで有名なある大学の研究室でデモを行い研究に採用してもらうこと、をそれぞれインターン半ばと最後の目標として進めたため、適度な緊張感を保ちながら進めることができた。リアルな現地の専門家からフィードバックを受ける刺激を貰いながら改善していく過程は、大変面白いものであった。
特に本チームにおいて、デザイナーとエンジニアが二人三脚となり相補的にコラボレーションが進んでいく様子、現地の優秀なエンジニアの仕事やキャリアに対する考え方などを聞けたこと、日系企業の文化とシリコンバレーのエンジニアとの葛藤が垣間見れたことなどと非常に貴重な経験を積むことができた。

4. 日々の生活について

【滞在先】
前半は、オフィス近くで見つけた日本人のシェアハウスに滞在。後半はCrailgslistで見つけたMountain Viewダウンタウン近くのシェアハウスにインド人二人と生活した。後半の家はなかなか文化の違いに苦労する部分もあった。また異常な家賃の高騰により、自分が見つけた家は月1100ドルでも築30年以上するぼろ家であり、蜘蛛やダニに噛まれるなどの死闘もあった。
【交通】
車社会なので、Uber/Lyftだけで生活するのは個人的には難く、中古車をビビナビというサイトで見つけて購入した。やはりサンフランシスコを除くベイエリアでは車は生活に必須だと思われる。しかし購入したクライスラーというアメ車の2006年式PTクルーザーが故障の多い車であることが後で発覚。途中で修理費を大幅に要するだけでなく、I-280というハイウェイの途中でエンジンが壊れるという恐怖を味わった。これからインターンを考えている方には、日本車かレンタカーを強く勧める。また自転車用のトレイルやレーンがきちんと整備されており、日本からロードバイクを輪行袋で持参していたため、自転車通勤をしたり、週末にサンフランシスコでサイクリングするなどと自由が広がった。
【生活】
日本食レストランや日本食スーパーは充実しており、生活必需品も日本からの郵送であってもAmazonで1週間で届いたため、不自由することはほとんどなかった。日本からドローンも持って来ていたため、許可されている地域で飛ばして遊んだ。(国立公園や密居住地域では基本的に禁止されている。)
冬場が想像していた温暖さよりも普通に寒かっため服に困った。病気や風邪には一切かからなかったのが幸運だった。
毎日のようにミートアップが開催されており、特に機械学習やAI等のエンジニア系、ピッチイベントなどのベンチャー系、ランゲージエクスチェンジの類は充実していた。またシリコンバレーに来ている日本人も面白い人が多かった。
起業に向けて独自のメディアを立ち上げて様々な日本人をインタビュー記事にまとめている八木さん。http://www.hiroshiyagi.com
シリコンバレージャパンユニバーシティの立ち上げをしていた方々。http://www.svju.org
ユーチューバーのTomokinさん。https://www.youtube.com/user/TOMOKIN1116
その他スタンフォードのMBA留学生、医学フェローシッップで来ている医者の先生方など。

5. 将来に向けて

一番日本との違いとして感じたのは、多様性に対する受容度である。色んな国籍の人たちと一緒に仕事する中で、人種関係なく日本人ならではの繊細さや謙虚さと同様の感覚を持っている人がいること知った。しかしその他にも、ずば抜けて優秀な人材から想像できないような気が狂った人まで多様な人がいる。そのため人への接し方にしてもキャリアの選択にしても、規範を守るのでなく皆自分のポジションやキャラを見定めて、自分で主体的に選択しているように感じた。それが自立心を生み、さらにコラボレーションを加速する。
また英語について、ネイティブ同士の日常会話になると途端についていけなくなるという状況は最後まで乗り越えることはできなかった。そういった些細な機微を伝えられるコミュニケーション力の壁は大きいが、それを超えることはあらゆる分野で大きなビジネスチャンスとなる機会を孕んでいることを実感した。
今後、このインターンの内容とは違う医療の道に進むことが決まっているが、アメリカのオープンな雰囲気と国際色豊かな文化の味をしめ、今回の経験を生かして医療分野(もしくは×ITで)でまたアメリカに戻ってくる道を模索しようと考えている。
尊敬するエンジニアCがふと口にし、記憶に残っている言葉をせっかくなので記載しておく。
“Generalist never know nothing”
“ROSの開発は最初に失敗したが、それが今や多くの企業のロボット開発のベースに育っている。同じように、ものづくりでリスクをとって失敗しても、個人の経験値となるため無駄になることはない。”

6. インターンを考えている方へのアドバイス

当たり前だが、インターン先は目的重視で慎重に選ぶべき。とにかくアメリカで働ければという動機では、日本の仕事と基本的に変わりないことを知り、身のある経験は得られない。特に生活費の高い都市部においては、給与次第で日々の生活が大きく制限されてしまうため給与面の条件は軽視してはならない。しかし単なる語学留学や国際交流に留まらず、仕事を共にすることは、価値観・考え方を深く知ることができる。アメリカには世界中から面白い人材が集まり、同じような感覚を持つ人から飛び抜けたような人がいて、毎日のようにそのような人と出会う機会が全ての人にオープンになっている。将来の糧になり可能性が拡がることは間違いない。今の会社で海外駐在が難しいのであれば、休職し一時的に経験を積みに来るのも良い選択肢となるのではないか。

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