学生時代に「RunMate」というWebサービス・スマホアプリを開発しました。
「RunMate」とは、予め設定されたランニングコースを走ることで、ランナー同士のつながりやインタラクションを生み出し、ランニングの楽しさを倍増させることを目的としたアプリです。
しかし残念ながら、本サービスは日の出を見ずに開発を終了してしまいました。
本サービス開発を通して得た新規事業開発の学びと反省点を整理すべく、本サービスを紹介させてもらいます。
RunMateを開発した経緯
現在、「運動不足はパンデミック」と言われています。
世界成人の4人に1人がWHOの推奨する運動量に達しておらず、特に先進国は途上国の2倍以上で、日本人の36%に達しています。
これは、長時間労働や交通機関の発達、スマートフォン普及などが人々から運動の機会を奪っているためです。
※ 週に150分の緩い運動、もしくは75分の激しい運動をしない人が、運動不足と定義されています。

そんな中で、一番身近になる運動不足解消法の1つがランニング。シューズとウェアさえあれば手軽に始めることができる運動です。
しかしランニングは1人で行うスポーツのため、球技などのような楽しさを伴わず、いざ始めてみたののの継続できない人がほとんどです。
そこでランニングにゲーミフィケーションを取り入れることで、ランナー同士の新たな繋がりと楽しさを生み出したいと思い、RunMateというサービスの着想に至りました。
RunMate(ランメイト)とは?


RunMateとは、予め設定されたコースをランニングすることで、自分と近しいユーザーと競争したり、コース上のクーポンが手に入ったりと、「ランニングを通した楽しさや繋がりを倍増させるアプリ」です。
具体的には、以下のような機能を有しています。
- 予めマップ上に設置されたコースに基づいてランニングをする「コースラン」を提供する。ランナーは普段のコースからちょっと寄り道または遠出して、この「コースラン」を行うことで、ポイントを獲得していく。このポイントを一定数獲得すると、そのコース上にあるお店で利用できるクーポン権が手に入る。
- ランナーは独自のコースを設定し、それをシェアして他のランナーに使ってもらうこともできる。またユーザー同士でグループを作りグループ内でコースや結果をシェアすることもできる。それらを組み合わせることで、ランニンググループの管理ツールとしても利用可能となる。
- ランナーは目標設定を行い、本アプリはユーザーの目標や性別、普段のペースや利用コースなどをもとに類似のランナーを「ライバル」として自動で追加する。そのライバルに勝利していくことでさらなるポイントを獲得することができる。
- 「コースラン」を行っているときに「ライバル」が同じコースを走っていると、アナウンスとともに「レース」が開始される。これによりランニング中の更なる楽しさを生み出す。
- その他、複数人で同時に同じコースを走ることでポイントが倍増する仕組みにより、集団での「コースラン」の継続を図る。また、レースの開始時間を事前に設定する「イベントラン」を提供することで、ランニングへのあと一歩を後押しをするとともに、ランナー同士が実際に顔見知りになるきっかけを提供する。
以上のようにコース上のお店で使えるポイントとライバルとの競争という2つの楽しさを主軸にランニングの習慣化の促進を目指しました。
以下が開発したアプリのデモ動画です。
本サービスを実際に使ってもらったりデモ映像をみてもらって、インタビューを行いました。その結果、20代のランニング経験者の60%からインストールしたいとの評価を得ました。

ビジネスモデルやシステム構成
ビジネスモデルですが、本サービスはランナーを動かすことができるため、ランステーションや温浴施設、ブランチスポットなどにランナーを誘導することが一番の収益源になると考えました。
また地域の運動不足解消に寄与するため、公共団体からのニーズも強いだろうという意見を得ました。
そのような構想のもと、当時流行っていたRuby on Railsでサーバーサイドを開発し、iOSアプリも初めてのSwiftで開発を行いました。


開発中断した経緯
ピッチコンテストに出たり、スタートアップ支援サービスを利用して、積極的にフィードバックを得ることを心掛けました。しかしサービスが形になっていくに連れて、次から次へと必要な機能が出てきたり仕様変更の必要が出てきて、開発課題が溜まっていきました。
例えば、ランニング中に使用するのであれば、交通事故等の安全面への配慮が必要なので音声でのサポートが必要だろうとか、リアルタイムにランナー同士で交流できる仕組み、ウェアラブルデバイスとの連携、ユーザーからランニングコースを投稿してもらう仕組み、ランニンググループを作る仕組み、・・・等々
そうやって1人で課題を捌き切れず山積していくうちに、学業面の負担が多くなり、本番リリース前に開発が頓挫してしまいました。
新規事業開発における反省点
今後新規事業開発にあたって同じような失敗をしないために、学びと反省点を整理しておこうと思います。どれも後から振り返るとスタートアップにおいて当たり前のことばかりなのですが、いざ当事者となると誤った時間の使い方をしてしまいがちですね。
1. 想定顧客・ユーザーを初めから握っておくべし(ニーズのバリデーション)
本サービスはアプリのユーザーと売上先が異なるモデルである。周囲にランニングをする友人はいたため、ランナーからのヒアリングは数多く行えたが、収益源と想定していたランステや飲食店等からヒアリングを怠ってしまった。アプリの開発を優先して事業開発を進めてしまったため、収益が上がる目処が見えないことがモチベーションの低下に繋がってしまった。
2. 苦手な分野は積極的に人に頼るべし
新規事業開発にあたっては苦手な分野は積極的に他人に頼ることが大事である。
1人でアプリ開発を頑張ってきた分、リリースまで全て自分1人でやってみたいという気持ちが芽生えたり、メンバーを増やして収入や名誉を横取りされたくないという錯覚に陥ってしまうことがある。そのせいで自分は、苦手意識のあるマーケティング・営業活動を後回しにし、開発を先行してしまったため、仕様変更が多くなってしまった。
3. 開発着手前のMVPをいかに鮮明に定義できるか
サービス開発においてはいち早くリリースしてユーザーの目に触れさせることが大事。開発するに連れて、欲しい機能があれもこれもと出てくる。あらゆることに手をつけ出すと一向にサービスがリリースできず、ユーザーからのフィードバックも得られない。本当に必要な最小限の機能は何か、MVPを明確に定義するとともに、その段階でユーザー検証を行い、仕様変更がなるべく出ないようにしなければならない。
4. プロダクトアウトよりマーケットイン
元エンジニアとしては、どうしても技術偏重になりがちで、良いものを作れば勝手に売れると想いがちである。しかし実際、世の中はマーケットイン、ニーズベースで動いている。営業やマーケティングをないがしろにしてはいけない。